世界怪奇録
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2026-05-13その他

北海道の山で遭難した夜、意識が消える直前に「誰かの手」が俺の体をさすっていた話

吹雪の中で意識を失いかけた登山者の体を、誰もいないはずの雪山でさすり続けた「手」。救助隊が語った事実が、恐怖を塗り替えた。

北海道の山で遭難した夜、意識が消える直前に「誰かの手」が俺の体をさすっていた話
Photo by Sara Guldin on Unsplash

あの夜のことを、ずっと誰にも話せなかった

友達が許可してくれたので、ようやく書きます。

自分は北海道出身で、中学くらいから山歩きをやってる人間です。霊感とかはゼロ。心霊番組も「よくできてんなー」くらいの感想しか持たないタイプ。だからこそ、あの夜のことをどう説明したらいいのか、何年たっても答えが出ない。

まず登場人物を整理しますね。俺をA、一緒に登った友人をTとします。当時、Tとは大学の山岳サークルで知り合ったばかりで、冬山の経験はTの方がちょっと上だった。行き先は北海道のとある山。名前は伏せさせてください。地元の人が読んだら一発で分かる場所なので。

あと長文です。文章もうまくないので、読みにくかったらすみません。

Tと二人で入山した日のこと

季節は冬。1月の下旬だったと思う。

天気予報では「午後から風が強まるが、荒天にはならない」という見込みで、俺たちは朝の5時に登山口を出発した。気温はマイナス12度。鼻の中が一瞬で凍りつくあの感覚。吐く息が顔に張りついて、まつげが霜で白くなる。でもこの程度は北海道の冬山では普通だし、二人ともそれなりに装備は整えていた。

問題は午後になってから起きた。

予報が外れた。完全に。

風速は体感で20メートルを超えていたと思う。視界が真っ白になって、5メートル先が見えなくなった。ホワイトアウトってやつ。雪と空の境界が消えて、上も下も分からなくなる。Tが3メートル前にいるはずなのに、声しか聞こえない。

T「A! 戻れるか!」

俺「無理! 方角がわかんねぇ!」

GPSは持っていたけど、手袋を外して操作する余裕がなかった。風で体ごと持っていかれそうだった。とにかく風をしのげる場所を探すしかない。二人でザックからスコップを出して、斜面に穴を掘り始めた。雪洞を作るつもりだった。

でも風が強すぎて、掘った端から雪が吹き込んでくる。Tが何度も叫んでいたけど、風の音で半分くらいしか聞き取れなかった。

1時間くらいかけて、なんとか二人が入れるくらいの穴を確保した。ツェルト(簡易テント)を入口に張って、中に潜り込んだ時にはもう日が暮れかけていた。

blizzard mountain snow whiteout night Photo by Artem Balashevsky on Unsplash

雪洞の中で起きたこと

雪洞の中は外と比べれば天国だった。風の音がくぐもって、体が震えるのが少しだけマシになる。でも寒いことに変わりはない。マイナス何度だったかは分からない。温度計を見る気力がなかった。

Tと交互に眠ろう、と決めた。両方同時に寝たら終わりだから。

最初に俺が仮眠を取って、2時間後にTと交代。そこまでは覚えている。問題はTの仮眠中、俺が起きて見張っている番のときに起きた。

暗闇の中で、ヘッドランプの明かりだけが頼り。Tは俺の左側で寝袋にくるまっている。風の音がごうごうと鳴っていて、ときどきツェルトがバタバタと暴れる。それ以外の音はない。はずだった。

最初は気のせいだと思った。

右腕に、何かが触れた。

手袋越しだから感触は曖昧なんだけど、「何かが動いている」のは分かった。腕を撫でるように、ゆっくり、ゆっくりと。上から下へ。下から上へ。

俺は最初「Tが寝ぼけて手を伸ばしたのか」と思って左を見た。Tは寝袋の中で完全にくるまっている。手なんか出てない。

右を見た。

誰もいない。

なのに、触れている。

手だった。人の手の大きさ、人の手の動き方。手袋越しでも分かる、指の感覚。5本の指が、俺の右腕を上から下へさすっている。

声が出なかった。怖いとかじゃない。体が動かなかった。寒さのせいか恐怖のせいか、今でも分からない。ただ金縛りみたいに固まったまま、その「手」がずっと腕をさすっているのを感じていた。

不思議なことがある。

怖くなかったんだ。途中から。

最初は全身が強張ったけど、その手がさすり続けるうちに、体がじんわり温かくなってきた。血が巡るような、こたつに入った時のような温もり。マイナス何度の雪洞の中で、そんなことがあるわけないのに。

意識がぼんやりしてきた。「あ、これはまずい、寝たらダメだ」と頭のどこかで分かっていたけど、温かさに抗えなかった。手はまだ、俺の腕をさすっていた。

そこで記憶が途切れる。

📺 関連映像: 冬山遭難 北海道 不思議な体験 — YouTube で検索

目が覚めた時に見たもの

次に意識が戻った時、視界が真っ白だった。

一瞬、死んだのかと思った。でも顔に風が当たっていて、痛いくらい冷たかった。生きてる。生きてるけど、状況が分からない。

ツェルトがなかった。風で飛ばされたらしい。俺は雪洞の入口近く、半分雪に埋もれた状態で転がっていた。Tの姿が見えない。

パニックになりかけたけど、すぐにTの声が聞こえた。

T「A! おい! 起きろ! 起きろって!」

Tは雪洞の奥にいた。俺より先に目が覚めて、無線で救助を呼んでいたらしい。時刻は朝の8時過ぎ。つまり俺は番をしている間に寝落ちして、そのまま6時間以上眠っていたことになる。

マイナス十何度の、ツェルトが飛んだ雪洞で、6時間。

普通なら凍死してもおかしくない。Tもそう言った。

T「お前、なんで生きてんだ。俺、目が覚めた時お前の体触ったら温かかったんだぞ。意味分かんねぇよ」

救助隊が来たのは昼前だった。ヘリは飛ばせなかったから、地上からの救助。隊員の人たちに引っ張られて、俺たちはなんとか下山した。低体温症の初期症状は出ていたけど、二人とも命に別状はなかった。

病院に運ばれて検査を受けている間、俺はずっと「あの手」のことを考えていた。Tには言えなかった。言ったところで信じてもらえるわけがない。

snow cave shelter mountain winter dark Photo by Jan Brennenstuhl on Unsplash

救助隊の人が言ったこと

退院した後、俺は救助隊の隊長さんに会いに行った。お礼を言うためと、もう一つ、聞きたいことがあったから。

隊長さんは50代くらいの、日焼けした顔の穏やかな人だった。「いやあ、無事でよかった」と何度も言ってくれた。

お礼を言い終えた後、俺は聞いた。

「あの雪洞の周りに、俺たち以外の足跡とか痕跡って、ありましたか」

隊長さんは少し黙った。それから、こう言った。

「足跡はなかった。吹雪で全部消えてるからね。ただ、一つだけ気になることがあった」

雪洞の入口付近、ツェルトが飛ばされた後の雪面に、何かで擦ったような跡があったという。人の手で雪をならしたような、平らに押された跡。風の模様とは明らかに違う、人為的な痕跡。

「動物かもしれないし、風のいたずらかもしれない。ただ、あの場所にあの天候で、人が来れるはずはないんだよ」

隊長さんはそこで話を切った。

俺は「あの手」のことを話そうかと思ったけど、やめた。話したところでどうにもならない。

でも隊長さんは最後にこう言った。

「山で助かった人がね、『誰かに体をさすられた』『温かい手に触れた』って言うことが、たまにあるんだよ。全員じゃない。でも、何人かいる。そういう人は大抵、助かってる」

湿った雪のにおいが、その時ふわっと鼻をかすめた気がした。病院のロビーにいたのに。

abandoned mountain rescue station snow fog Photo by Mikhail Mamaev on Unsplash

あれから何年もたった今でも

Tにはあの夜のことを、一度だけ話した。去年の秋、久しぶりに二人で飲んだ時に。

Tは最初、黙って聞いていた。否定も肯定もしなかった。ビールのグラスを回しながら、しばらく考えて、こう言った。

T「俺さ、お前が寝てる間に一回起きてるんだよ。寒くて目が覚めて、お前の方を見た。暗くてよく見えなかったけど、お前の右側に何かいた気がした」

俺「何か?」

T「分かんない。影っていうか。でも風でツェルトがバタバタしてたから、その影かもしれない。だからその時は気にしなかった。でもお前の話聞いて、ちょっと鳥肌立ってる」

Tはそれ以上何も言わなかった。俺も聞かなかった。

あれが何だったのか、今も分からない。低体温で意識が朦朧としていた俺の幻覚だったのかもしれない。脳が死にかけの体を守るために見せた、都合のいい夢だったのかもしれない。

でも「体が温かかった」のは幻覚じゃない。Tが証言している。雪面の痕跡も、救助隊の隊長さんが見ている。

それと、もう一つだけ。

退院してから数日後、実家に帰った時に母親が言ったことがある。

「あんた遭難したあの夜ね、夢を見たの。お父さんが出てきて、『あの子のところに行ってくる』って言ったの」

親父は俺が高校の時に死んでいる。山が好きな人だった。冬山にも何度も入っていた。

ただの偶然だと思う。思いたい。

でもあの手の温もりを、俺の体はまだ覚えている。右腕をさすられた、あの、ゆっくりとした動き。あれがもし親父だったとしたら、俺はあの吹雪の夜、死んだ父親に命を助けられたことになる。

そう考えると怖いというより、胸が詰まる。

ホントに長くなりました。読んでくれた人、ありがとうございます。あれが何だったのか分かる人、似た経験がある人がいたら教えてほしい。

dark forest path snow winter mist Photo by Anton Sobotyak on Unsplash

何が分かっていて、何が分かっていないか

分かっていること。俺とTは冬山で遭難し、雪洞で一夜を過ごした。ツェルトは風で飛ばされた。俺は見張り番中に意識を失い、6時間以上眠った。目覚めた時、体は異常なほど温かかった。雪洞入口の雪面には、人の手でならしたような跡があった。

分からないこと。あの手が何だったのか。なぜ俺の体が温かかったのか。雪面の痕跡が何によるものか。母親の夢との関連。

救助隊の隊長さんが言った「体をさすられたという遭難者は、大抵助かっている」という話が気になって、その後自分なりに調べた。山岳遭難の記録や体験談を読み漁ったけれど、似たような証言はいくつか見つかった。意識が遠のく中で「誰かに触れられた」「温かい手を感じた」という話。医学的には低体温時の末梢神経の異常反応や、矛盾脱衣と呼ばれる現象の前段階として説明されることもあるらしい。

でも矛盾脱衣は「暑く感じて服を脱ぐ」現象であって、「外部から温められる」のとは違う。少なくとも俺の場合、服は脱いでいない。体が温かかったのは客観的事実として、Tが証言している。

山には、人間の理屈では説明できない何かがある。それは怖いものばかりじゃなくて、時には人を守るものもあるのかもしれない。

結局あの手が何だったのかは、今も分からないまま。分からないまま、ここに書き残しておきます。

出典: the-mystery.org「吹雪の夜に触れた手」

もっと深く知りたい人向けの本

山にまつわる不思議な話や怪談をもっと読みたくなった人には、以下の本をおすすめします。

田中康弘『山怪 山人が語る不思議な話』(山と溪谷社)。マタギや猟師、山で暮らす人々から直接聞いた奇妙な体験談を集めた一冊。「山には何かがいる」という感覚を、これほど生々しく伝える本はなかなかない。

木原浩勝・中山市朗『新耳袋 第一夜』(角川文庫)。実話怪談の金字塔。百物語形式で綴られる99話の中に、山や雪にまつわる話もいくつか収録されている。淡々とした語り口が逆に怖い。

安曇潤平『山の霊異記 赤いヤッケの男』(角川文庫)。登山者である著者自身が体験した、あるいは山仲間から聞いた霊異譚を集めたシリーズ。今回の話と似た「雪山で何かに助けられた」系の体験も載っていて、読むと背筋がざわつく。


本記事は世界各地の伝承・都市伝説・公開報道を編集したものです。個別の事象が超常現象であると主張するものではなく、文化史的な記録としてお読みください。心霊スポットへの無断侵入は法的トラブルの原因になります。立入禁止表示には必ず従ってください。

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