ダイビング中にウミガメから平手打ちを食らった男の話──海の底で「何か」が怒っていた
ダイビング中に突然ウミガメからビンタされた男性の映像が世界中で話題に。なぜ彼は殴られたのか、誰にもわからない。

あの日、海の中で何かに怒られた
Mは大学時代からの友達で、ダイビングが趣味の、まあ言ってしまえば「海バカ」だ。
俺自身は泳ぎが得意じゃないんで海には近づかない人間なんだけど、Mがやたら興奮した声で電話をかけてきたのがきっかけで、この話を知った。深夜1時だった。寝かけてたのに。
M「お前、今すぐこの動画見ろ。海外のやつ。ウミガメにビンタされてる」 俺「は?」 M「いいから見ろって。マジだから。ぺしこーんって。完璧なビンタ」
何言ってんだこいつ、と思いながらスマホで検索したら、本当だった。
ダイビング中の男性が、海の中を悠然と泳いでいたウミガメとすれ違う。その瞬間、ウミガメが前ヒレを振りかぶるようにして、男のマスク越しの顔面をはたいている。しかもフォームが綺麗なのだ。人間が誰かの頬を張るときの、あの弧を描くような軌道。
何度見ても笑えるんだけど、同時にちょっとゾッとした。なんでウミガメが人間を「叩く」なんて行動を取るのか、まったく説明がつかなかったから。
長くなるかもしれないけど、この件について俺なりに調べたことも含めて書いてみます。読みにくかったらすみません。
Photo by Marie TILMANT on Unsplash
映像に映っていたもの
問題の映像を撮影したのは、アメリカ在住のコンテンツクリエイターだ。普段から海中での撮影をSNSに上げている人物で、ダイビング歴もそれなりに長いらしい。
映像を見ると、場所はそこそこ透明度の高い海域。光が水面から差し込んで、青白い世界が広がっている。ダイバーはカメラを自分に向けて泳いでいて、その背景にウミガメが一頭、ゆったりと近づいてくる。
このときダイバーはカメラに向かって何かポーズを取っていたようで、ウミガメの接近にまったく気づいていない。振り返ったわけでもない。カメラの画角にウミガメが入ってきて、横を通過するのかなと思った次の瞬間。
ぺしっ。
前ヒレが、ダイバーの顔面に当たった。
水中だから音は聞こえないはずなんだけど、見ている側の脳内では「ぺしこーん」という擬音がはっきり再生される。それくらい、動きが明確だった。偶然ぶつかったとか、ヒレが流れに乗って当たったとか、そういう曖昧さがない。腕を振り抜いている。
ダイバー本人もなぜビンタされたのかまったく心当たりがないと語っていて、動画のキャプションにも「Why did he slap me(なんで叩かれたの)」的な困惑が書かれていた。
この映像がSNSに投稿されると、数日で何百万回も再生されて、世界中で話題になった。コメント欄には「カメの方が正しい」「前世で何かやったな」「海の住人に失礼なことをしたんだろう」みたいな冗談が溢れていたんだけど、俺が気になったのはもうちょっと別のところだった。
ウミガメは本当に「怒って」いたのか
ここからは俺が調べた範囲の話なので、専門家から見たらツッコミどころがあるかもしれない。わかる人がいたら教えてほしいです。
まず、ウミガメという生き物について。彼らは基本的におとなしい。ダイバーが近づいても逃げることはあっても、積極的に攻撃してくることはほぼないとされている。サメやイルカと違って、ウミガメが人間を傷つけたという報告自体がかなり少ない。
じゃあなんでビンタしたのか。
ひとつ考えられるのは、縄張り意識だ。ウミガメの中には、特定の岩場やサンゴ礁を「自分の場所」として守る個体がいるという研究がある。ダイバーがたまたまそのエリアに侵入したことで、追い払おうとした可能性。ただし、映像を見る限り、ダイバーは開けた場所を泳いでいて、特定の岩場に近づいていた様子はなかった。
もうひとつは、繁殖期の気性の変化。ウミガメは繁殖期になるとオス同士でヒレを使って争うことがあるらしい。人間をライバルのオスと勘違いした、という仮説。でもこれも無理がある。どう見てもダイバーはウミガメに似ていない。
Mに聞いたら、Mはこう言った。
M「お前さ、人間の理屈で考えすぎなんだよ。海の中って、マジで別世界だからね。陸上の常識は通用しないよ。あいつらには、あいつらの理由があんだよ」
いや、それは説明になってないだろ、と思ったけど、同時に妙に納得してしまう自分もいた。
実際、海の生物が予想外の行動を取るケースは珍しくない。イルカがダイバーを執拗に押し上げてきたり、タコが水中カメラを奪って逃げたり。人間の側からすると「なんで?」としか言いようのない行動を、彼らは平然とやる。理由を聞ける相手じゃないから、永遠にわからないまま終わる。
ウミガメのビンタも、結局のところ、そういう類の出来事なのかもしれない。
📺 関連映像: ウミガメ ダイバー 面白い 海中映像 — YouTube で検索
海で「叩かれた」人たちの話
俺はこの動画を見てから、似たような体験談がないか気になって色々調べてみた。まとめサイトとかダイビングフォーラムとか、英語圏の掲示板も含めて。そしたら、出るわ出るわ。
あるダイバーは、カリブ海で大型のウミガメに後頭部をヒレで叩かれたと証言している。振り返ったらウミガメは何事もなかったように泳ぎ去ったそうだ。別のダイバーは、沖縄の慶良間諸島でアオウミガメに足ヒレを噛まれたと書いていた。痛くはなかったらしいが、びっくりして浮上したとのこと。
面白いのは、どの体験談にも共通して「理由がわからない」という一文が添えられていること。挑発したわけでもない。触ろうとしたわけでもない。ただ近くにいただけ。なのに、叩かれた。噛まれた。追いかけられた。
こういう話を読んでいると、なんとなく、海の生き物たちが人間に対して「ちょっと黙ってろ」と言っているような気がしてくる。気のせいかもしれないけど。
沖縄のダイビングショップを経営している知人にも聞いてみた。その人はもう20年以上海に潜っている。
「ウミガメに叩かれた? あるよ、全然あるよ。でもね、叩かれる人って大体、自分では気づいてないけど、カメの進行方向を塞いでたり、真正面に浮いてたりするんだよね。カメからすれば、『どけよ』ってことだと思う」
なるほど。つまりウミガメ版の「ちょっとそこ、邪魔なんですけど」ということか。
ただ、今回の動画のダイバーは、ウミガメの進行方向を塞いでいたようにも見えなかった。斜め後ろから近づいてきて、すれ違いざまに叩いている。計画的犯行にすら見える。
Mはこの話を聞いて大笑いしていた。「計画的ビンタワロタ」と。笑い事じゃないんだけどな。
古い漁師が語った「海のもの」の話
ここからはちょっと脱線する。怖い話、というほどでもないんだけど、不思議な話。
俺の祖父は漁師だった。もう亡くなっているけど、生前よく海の話をしてくれた。その中にひとつ、ウミガメに関する話があった。
祖父が若い頃、夜の漁で沖に出ていた時、船の横を巨大なウミガメが並走するように泳いでいたことがあったという。月明かりで甲羅が光っていて、ゆうに1メートルを超える大きさだった。祖父は最初、珍しいなと思って眺めていたんだけど、途中でウミガメがこちらを見上げたのだという。
「目が合った」と祖父は言った。
「あれはな、ただの動物の目じゃなかった。何か言いたそうな目だった。それで俺は急いで網を上げて、港に帰った」
理由を聞いたら、祖父は「海のものに見つめられたら、その日は漁をやめろ。昔からそう言われてる」と答えた。何がどう危ないのかは教えてくれなかった。
今回の動画を見たとき、俺は祖父のその話を思い出した。ウミガメの「意思」みたいなもの。人間の側からは測れない、何かの感情。怒りなのか、警告なのか、それとも単なる気まぐれなのか。
海の中の温度が急に下がる感覚。潮の匂いが変わる瞬間。ダイバーたちが口を揃えて「海には海のルールがある」と言うのを聞くたびに、俺は陸の上で、少しだけ背筋が冷たくなる。
Photo by Florian Delée on Unsplash
何が分かっていて、何が分かっていないか
今回の「ウミガメのビンタ」事件について、わかっていることを整理する。
映像は本物だ。加工やCGの痕跡は指摘されていない。ダイバー本人も状況を説明しており、演出の意図はなかったと語っている。ウミガメが前ヒレでダイバーの顔面を叩いたこと、それ自体は映像から明らかだ。
わかっていないのは、「なぜ叩いたのか」という一点に尽きる。
縄張り意識、繁殖期の攻撃性、進行方向の妨害に対する反応。いくつかの仮説は出ているけれど、どれも決定打ではない。そもそもウミガメの行動学自体、まだ解明されていないことが山ほどある。百年以上生きる個体もいる彼らが、その長い生涯の中でどんな経験を積み、何を記憶し、何に怒るのか。人間にはほとんどわかっていない。
俺がこの話をわざわざ書いたのは、単に面白動画の紹介がしたかったわけじゃない。
海の中で起きたこの小さな出来事が、どこか「こっちの世界」の常識では説明しきれない匂いがしたからだ。ウミガメはなぜ、あのタイミングで、あの角度で、あの一頭だけが、人間を叩いたのか。
結局、それは今もわからないままだ。
Mは最後にこう言っていた。
M「海ん中ってさ、人間が思ってる以上に、向こう側に近いんだよ」
向こう側って何だよ、と突っ込んだら、電話は切れた。
アレが何だったのか、ダイビング経験ある人で似たようなことがあった人がいたら、ぜひ教えてほしい。長文失礼しました。ここまで読んでくれた人、ありがとう。
出典: カラパイア
Photo by Vincent Dufour on Unsplash
もっと深く知りたい人向け
ウミガメの生態や海の不思議についてもっと知りたい人には、以下の本をおすすめしたい。
『ウミガメの自然誌』(亀崎直樹、東京大学出版会)は、日本におけるウミガメ研究の第一人者による本格的な一冊。産卵だけでなく、海中での行動パターンや回遊ルートまで詳しく解説されている。
『海についてのすべて──海の生物と私たちの暮らし』(フロリアン・フーバー、河出書房新社)は、海洋生物と人間の関わりを幅広く扱った読み物。ウミガメに限らず、海の生き物たちが見せる不可解な行動の背景を知るヒントになる。
『海の怪』(山口敏太郎、竹書房文庫)は、海にまつわる怪談や不思議な話を集めた一冊。漁師の伝承から現代のダイバーの体験談まで収録されていて、今回の話と通じるものがある。
本記事は世界各地の伝承・都市伝説・公開報道を編集したものです。個別の事象が超常現象であると主張するものではなく、文化史的な記録としてお読みください。心霊スポットへの無断侵入は法的トラブルの原因になります。立入禁止表示には必ず従ってください。
📚 この記事で紹介した書籍
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ウミガメの自然誌
亀崎直樹 / 東京大学出版会
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海についてのすべて──海の生物と私たちの暮らし
フロリアン・フーバー / 河出書房新社
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海の怪
山口敏太郎 / 竹書房文庫
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