推進剤90%カット、音のない青い炎──NASAが点火した「火星行きエンジン」を見た夜から、夜空の見え方が変わった
真空チャンバーの中で静かに灯った120キロワットの青白い光。あの映像を見てから、俺の中で火星がただの星じゃなくなった。

あの映像を見た深夜3時、俺は布団の中で目が冴えていた
Tに深夜のLINEを送ったのは、たぶん午前3時すぎだったと思う。
「これ見てくれ。マジで」
リンクだけ貼って、既読がつくのを待った。つくわけがない。平日の深夜だ。普通の人間は寝てる。でも俺はそのまま布団の中でスマホを握ったまま、天井をぼんやり眺めてた。さっき見たNASAの映像が頭から離れなかった。
俺は宇宙関係の仕事をしてるわけでもないし、理系の大学を出たわけでもない。ただ子どものころから火星に人が降り立つニュースを「生きてるうちに見たい」とずっと思ってきた、ただのオタクです。まとめサイトはオカルト系と未解決事件系を巡回してる側の人間で、自分から書き込むことなんて一生ないと思ってた。
でも先月末、NASAが公開した点火試験の映像を見て、あれ以来ずっとモヤモヤしてる。書かないと消化できない気がして、ここに来た。
長文かも。文才もないので読みにくいかもしれません、許してください。
会話の内容も覚えてるものをそのまま書いてるので乱文かもしれません。
で、火星の有人探査って、俺が小学生のときからずっと「あと20年後にはいけるかも」って言われ続けてきたんですよ。20年経っても、また「あと20年後」って言われる。それを何周もした。だから正直、NASAが新しいエンジンの試験に成功しましたってニュースを最初に見たときも、「ああ、またか」って思った。どうせまた将来の話でしょ、って。
でも数字を見たとき、手が止まった。
推進剤90%カット。出力120キロワット。米国内の電気推進エンジンとして過去最高。
この数字の意味を自分なりに噛み砕いていったら、笑えなくなった。ホントに。
翌朝、Tから返信が来た。「お前が宇宙の話で興奮してるの初めて見た」。いや、興奮とはちょっと違う。なんだろう、畏怖に近い。暗いチャンバーの中で音もなく青白い光が伸びていった瞬間、俺の中の何かがひっくり返った。その感覚を今から書く。
Photo by Taton Moïse on Unsplash
火星に行けない理由は、ずっと「重さ」だった
なんで人類はまだ火星に降り立ってないのか。技術がないのか。カネがないのか。どっちもある。でも根っこにあるのは、もっとシンプルで残酷な物理の制約だ。
重さ。
化学ロケットで火星に飛ぼうとすると、途方もない量の推進剤を積まなきゃいけない。推進剤を積めば機体が重くなる。重くなればさらに推進剤が要る。この悪循環。ロケット工学ではこれを「ツィオルコフスキーの暴君」って呼ぶ研究者もいるらしい。まさに暴君。逃げられない。
アポロ計画でサターンVが月に人を送ったとき、打ち上げ時の総重量はおよそ2,950トン。そのほとんどが推進剤だった。月まで約38万キロ。火星は最接近時でもその140倍以上、だいたい5,500万キロ離れてる。単純比例はしないにしても、化学ロケットだけで有人往復なんてやろうとしたら、積む燃料の量が現実の枠を軽く超える。
Tに電話でこの話をしたら、「それってさ、東京から大阪まで車で行くのに、ガソリンの重さで車が動かなくなるみたいな話?」って言われた。感覚的にはそれに近い。目的地が遠すぎて、そこに辿り着くための燃料が足枷になるっていう、ロケットに課せられた原罪みたいなもんだ。
この「重さの壁」を壊す方法として前から注目されてたのが、電気推進エンジン。
仕組みをざっくり言うと、キセノンとかのガスに電気エネルギーをぶつけてプラズマ化して、それを磁場や電場で高速に噴射して推力を得る。化学反応みたいに大量の燃料を燃やすわけじゃないから、必要な推進剤がめちゃくちゃ減る。ただし弱点もある。推力が小さい。化学ロケットみたいな爆発的な加速はできない。じわじわと、長い時間をかけて加速し続けることで最終的な速度を稼ぐ方式。
だから出力が鍵になる。出力が上がれば加速にかかる時間が縮まって、有人ミッションとして現実的な飛行日数に近づく。今回NASAが叩き出した120キロワットは、その鍵をようやく手にしたってことなんだと俺は理解した。
俺がこの仕組みを初めて知ったのは高校のとき。図書館で手に取った宇宙工学の入門書に「電気推進なら火星まで推進剤10分の1以下で行ける」と書いてあった。じゃあなんで今すぐやらないんだよって思った。答えは単純で、当時はそんな大電力を宇宙空間で作れなかったし、エンジン自体もそこまでの出力に耐えられなかった。あれから15年以上。ようやく数字が追いついてきた。
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120キロワットの青白い光が灯った日
点火実験が行われたのは、NASAグレン研究センターの大型真空チャンバーだ。直径数メートルの円筒形の部屋から空気を抜いて、宇宙空間に近い環境を人工的に作る。その中にエンジンを据えて、電力を供給して、プラズマを噴かせた。
ちょっと想像してみてほしいんですが、120キロワットってどのくらいの電力かというと、一般的な日本の家庭が使うピーク時の電力がだいたい5~10キロワット。つまり12~24世帯分の電気を、一基のエンジンにまるごと叩き込んでる計算になる。小さめのマンション一棟分の電気を丸ごとロケットエンジンに食わせてるようなもんだ。
これまでの米国内の電気推進エンジンの出力記録を大幅に更新して、NASAの発表では推進剤の使用量が化学ロケット比で約90%削減できる見込みだという。
90%。
この数字の重みを自分なりに考えてみた。地球から持ち出す推進剤が10分の1になるってことは、浮いた重量のぶんだけ食料を積める。水を積める。居住モジュールを積める。科学機器を積める。あるいは打ち上げ回数そのものを減らせる。火星有人探査の最大のボトルネックが、数字の上では解消に向かってる。
で、俺がいちばんゾクッとしたのは、NASAがこのエンジンを「深宇宙輸送アーキテクチャ」と位置づけてるってこと。火星だけの話じゃない。出力がさらに上がっていけば、木星圏、土星圏への有人輸送すら視野に入る。120キロワットは出発点であって、到達点じゃない。
あの映像の話をする。
俺が見たのはNASAの公式チャンネルに上がっていた短い映像だった。暗い真空チャンバーの中で、エンジンのノズルから青白い光の舌が伸びていく。音はなかった。真空だから当たり前なんだけど、その無音がかえって不気味だった。化学ロケットの点火映像って爆音と炎と振動の塊で、分かりやすく「すげぇ」ってなる。でもあの電気推進エンジンの映像は違う。静謐で、冷たくて、でも確実に何かが動いている。深夜の病院の廊下に一人で立っているような、あの種の怖さがあった。何かがもう始まってしまったんだ、という感覚だけがじわじわと胸の底に沈んでいった。
📺 関連映像: NASA 電気推進エンジン 点火試験 火星 — YouTube で検索
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眠れなかった技術者の話と、はやぶさの記憶
ここから先は、NASAの電気推進研究に長く携わってきた技術者たちの周辺で語られている話だ。公式の記録じゃないし、俺が直接取材したわけでもない。海外のフォーラムや航空宇宙系のコミュニティに断片的に落ちていた証言を、俺なりに繋ぎ合わせたものだと思ってほしい。
点火試験の当日、チャンバーの外では十数人のエンジニアがモニター越しに見守っていた。ある技術者は、実験の数時間前から胃が痛かったらしい。電気推進エンジンの大出力試験は、過去に何度も失敗してる。プラズマの制御が乱れればエンジンが溶ける。チャンバーの内壁が焼かれる。何年もの開発が一瞬で煙になる。
カウントダウンが終わって電力が供給された瞬間、モニターに青白い光が走った。数値がリアルタイムで跳ね上がる。推力、電力、温度。すべてが想定の範囲内。
「あのとき部屋の空気が変わった」と近くにいた関係者は振り返っている。誰も声を出さなかった。画面を見つめたまま数秒の沈黙。蛍光灯のジーッという音だけが妙に耳についたらしい。うまくいった、という実感が広がるまでに少し時間がかかった。
一人の年配のエンジニアが、モニターの前に立ったまま眼鏡を外して目頭を押さえた。この分野に30年以上を費やしてきた人物だとされる。全員がデータに釘付けで、その背中を誰も見ていなかった。
その夜、彼は自宅で眠れなかったと言われている。嬉しさじゃなくて、これから始まることの重さに押しつぶされそうだった、と。成功した瞬間から、このエンジンは「いつか火星に人を送る装置」ではなく「送らなければならない装置」に変わった。
電気推進エンジンは突然出てきた技術じゃない。理論的な提唱はロケット工学の父、コンスタンチン・ツィオルコフスキーにまで遡る。20世紀の初頭だ。そこから1960年代に米ソで小規模な実験が始まって、イオンエンジンとかホールスラスタとかの方式が開発されてきた。
日本人にとっていちばん馴染みがあるのは、やっぱり「はやぶさ」だと思う。JAXAの小惑星探査機に搭載されたイオンエンジン。推力はたった数十ミリニュートン。指先で蝶を押すよりも弱い力。でもその微弱な推力を何千時間も続けることで、小惑星イトカワまでの往復を成し遂げた。2010年、ボロボロの状態で地球に帰ってきたはやぶさのカプセルが大気圏で光った映像、覚えてる人も多いはず。
はやぶさのイオンエンジンの消費電力は約1キロワット。今回NASAが点火したエンジンはその120倍。方式も規模もまったく違うけど、電気の力で宇宙を航るという根っこの思想は同じだ。はやぶさが切り開いた道の、はるか延長線上に120キロワットエンジンがある。
そしてもうひとつ。大出力の電気推進エンジンを宇宙で動かすには、それだけの電力を宇宙空間で確保しなきゃいけない。有力なのは小型原子炉を電源にする方式。NASAはすでに宇宙用の小型核分裂炉の開発プロジェクトを進めていて、電気推進エンジンと組み合わせる構想が描かれている。ロケットの心臓が電気推進で、血液を送るポンプが原子力。この組み合わせが実現したら、人類の行動圏は一気に広がる。
Tに「原子力で動く宇宙船って怖くないか」って聞いたら、「お前が普段読んでる心霊系のほうがよっぽど怖いわ」って返された。まあそりゃそうなんだけどw でもさ、人間が作ったエンジンに原子の火を入れて、5,500万キロ先の惑星に人を送り届けようとしてるって、冷静に考えると正気の沙汰じゃない。
Photo by Wolfgang Hasselmann on Unsplash
結局なんだったのか
整理する。
わかっていること。NASAは米国内最高出力となる120キロワットの電気推進エンジンの点火試験に成功した。推進剤は化学ロケット比で約90%削減できる見込み。このエンジンは火星有人探査を見据えた深宇宙輸送システムの中核技術として位置づけられている。
わかっていないこと。このエンジンが実際の宇宙空間で長時間稼働できるかどうか。地上の真空チャンバーと本物の宇宙では条件が違う。微小隕石、宇宙放射線、熱環境。チャンバーの中で完璧に動いたからといって、深宇宙で同じ性能を出せる保証はまだない。電力源が原子炉になるのか大型太陽電池パネルなのか、最終的なアーキテクチャもまだ固まっていない。そして火星有人探査の具体的なスケジュールは依然として流動的だ。NASAの予算は議会次第。技術が完成しても、政治が追いつかなければ飛べない。
でも。
120キロワットのプラズマが青白く光ったあの瞬間、人類と火星の距離は確実に縮まった。俺はこの手のニュースに触れるたびに、いつも同じことを考える。生きてるうちに、火星の地表に人間の足跡がつく日を見届けられるだろうか。子どものころから何度も繰り返してきた問い。
でも今回だけは、その問いの後ろに「もしかしたら」がくっついた。
皆さんに聞きたいんです。この話、どう思いますか。点火試験の成功なんてまだまだ先の長い旅の一歩にすぎない。それはわかってる。でもあの真空チャンバーの中で光った青い炎は、まだ誰も見たことのない景色への入り口だった。赤い砂漠に人の影が落ちる日。その日が来るのか来ないのか。わからない。わからないけど、エンジンにはもう火が灯った。
あの映像を見てから、夜空を見上げる癖がついてしまった。火星はこの時期、日没後の西の空あたりに赤っぽく光ってる。前はただの星だった。今は「あそこに行くためのエンジンに、もう火が入った」と思いながら見てる。同じ星なのに、見え方がまるで変わった。
長文読んでくれた人、ありがとう。アレが結局どこまで実用化されるのか、詳しい人がいたら教えてほしい。
Photo by Andy Sanchez on Unsplash
もっと深く知りたい人向け
この話を読んで電気推進とか火星探査に興味が湧いた人に、俺が読んで面白かったものを置いておく。
『ロケットの科学 改訂版』(谷合稔、SBクリエイティブ)は、化学ロケットから電気推進まで推進系の仕組みが図解でわかりやすく整理されてる。文系の俺でも読めた。
『宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八』(小野雅裕、SB新書)は、NASAのJPLで実際に働いてるエンジニアが書いた本。人類が宇宙に手を伸ばしてきた歴史を物語として読める。
『はやぶさ 不死身の探査機と宇宙研の物語』(吉田武、幻冬舎新書)は、電気推進エンジンで小惑星を往復した「はやぶさ」の全記録。エンジンが壊れて、それでも帰ってきた経緯がすごい。
『火星の歩き方』(臼井寛裕・野口里奈、光文社新書)は、火星の地形や環境を最新の探査データをもとに解説した一冊。いつか人が降りるかもしれない場所の予習ができる。
気になったものがあればぜひ。
本記事は世界各地の伝承・都市伝説・公開報道を編集したものです。個別の事象が超常現象であると主張するものではなく、文化史的な記録としてお読みください。心霊スポットへの無断侵入は法的トラブルの原因になります。立入禁止表示には必ず従ってください。
📚 この記事で紹介した書籍
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ロケットの科学 改訂版
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宇宙に命はあるのか 人類が旅した一千億分の八
小野雅裕 / SB新書
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吉田武 / 幻冬舎新書
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火星の歩き方
臼井寛裕・野口里奈 / 光文社新書
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