呪物・禁忌
古書に挟んだ紙片を抜いても翌朝には戻っている。鉛筆の数字だけが減っていく
買い取った蔵書から抜いた紙片が毎朝同じ頁に戻る。鉛筆書きの数字は抜くたびに減り、柱時計は四分遅れ、誰もいないはずの店に湯呑みが二つ。
買い取った蔵書から抜いた紙片が毎朝同じ頁に戻る。鉛筆書きの数字は抜くたびに減り、柱時計は四分遅れ、誰もいないはずの店に湯呑みが二つ。
平成十二年の冬、叔父に連れられた奥会津の廃湯屋。雪だけが積もらないその場所で、黒電話が繰り返した言葉の意味とは。
繭が一粒も減らない釜から、検尺器が十万メートルを超えても終わらない糸が出続けた。昭和の製糸場で語られた怖い話。
誰もいないはずの空き家で、交換したばかりの鍵が内側から閉まっていた。錠前技師が体験した不可解な出来事。
平成五年の台風直後、丹後の集落で損害調査員が遭遇した「存在しないはずの一戸」をめぐる不可解な記録。
昭和四十四年、日向の山奥で見た夜神楽。番付にない三十四枚目の面を被った「誰か」と、毎晩一つずつ足りなくなる握り飯の記憶。
平成十二年の冬、東北の山奥の湯治宿。引いてはならない留め湯が持ち出された朝から、すべてがおかしくなった。
昭和六十三年、城石の切り出し跡が残る無人島で記録調査に参加した写真係が体験した、綱と残念石にまつわる恐怖。
名を告げずに火を借りた夜、甘い匂いだけが残り、柱の傷が一本増えていた。四国の在に伝わる禁忌の話。
乗合バスの運転手が語る、地名を失った停留所と、そこで扉を開けた十七歳の車掌の記憶。
昭和51年、城下町の電話局に就職した投稿者が、空き番号の度数計だけが毎月七ずつ増える異常に気づく。やがてロッカーの数も、写真の人数も合わなくなっていく。
深夜バイト中、地下の旧氷室に先輩と降りた投稿者。だが石段を上がったのは一人。番号でしか人を数えない場所で起きた体験談。
昭和の遠洋漁船で夜の見張りに立っていた男が体験した、潮の止まった並行世界の港町。貝と珠を渡してきた漂着民の正体とは。